心が折れたとき、その感触や痛みは、うまく言葉になりません。
誰にも話せず、だからといって一人で泣けるわけでもなく、布団の中で天井を見つめている。
そんな時間は、とても長く感じられます。
「頑張れ、頑張れ」と自分を励ましながら、ここまでやってきました。
けれど、ある日、「もう無理かもしれない」と思う日が訪れます。
それは弱さではないと、今ならわかります。
それだけ力を使って生きてきた、ということです。
そういう夜のために、この4冊を選びました。
今すぐ読めなくてもかまいません。
ただ、いつでも開ける場所に置いてほしいのです。
記事の後半では、本だけで抱えきれないときの相談先も紹介します。
心が折れた夜に、小説が効くことがある
傷ついたとき、励ましの言葉が重く感じられる夜があります。
前向きな助言に、ついていけないこともあります。
弱っているときは、正しい言葉より先に、安心できる場所を求めるからでしょう。
そんなとき、小説は無理に立ち上がらせようとはしません。
登場人物の人生をそばで感じる。
それだけで心の痛みが、わずかに和らぐことがあります。
今回選んだ4冊は、それぞれ違う角度から、今の自分を受け入れる感覚を手渡してくれる物語です。
逃げてもいい。
今日は眠るだけでもいい。
暮らしを立て直すところから始めてもいい。
過去を抱えたままでも、人生は編み直せる。
そんな感覚がほしい夜に、ページを開いてみてください。
文字を追う気力も残っていない方は、本よりも先に「誰かに話す」ことが必要な時期かもしれません。
▶本だけで抱えきれない夜の相談先を見る
もう頑張れない夜に読みたい小説4選
『西の魔女が死んだ』梨木香歩|逃げてもいいと思える物語
職場や学校、人間関係から少し離れたい人に向く一冊です。
中学に進んで間もなく、学校へ行けなくなった少女・まい。
彼女は祖母の家を訪れ、「西の魔女」と呼ばれるおばあちゃんと一夏を過ごします。
畑を耕し、ジャムを煮て、星を眺める。
その日々のなかで、おばあちゃんはまいに「魔女修行」を授けます。
「いちばん大切なのは、意志の力、自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です」
自分で決める。
言葉にすると単純ですが、実際にはとても難しいことです。
とくに、周囲に合わせながら生きる日々のなかでは、気づかないうちに「自分はどうしたいのか」が見えなくなってしまいます。
この小説のなかで、まいは急かされません。
立ち直ることも、前に進むことも、無理に求められません。
休むことも、逃げることも、まい自身に委ねられます。
その見守り方が、この物語の魅力です。
ままならない場所から離れた人にとって、この一冊は「それでよかったのかもしれない」と思わせてくれます。
心が折れた夜に読むと、逃げることは敗北ではなく、自分を守る判断なのだと気づかされます。
『かもめ食堂』群ようこ|暮らしを立て直す力をくれる物語
何もできない、生活の手ざわりを失っている人に向く一冊です。
「もう頑張れない」と思ったとき、人は大きな答えより先に、呼吸がしやすい場所を求めるのかもしれません。
『かもめ食堂』の舞台は、フィンランドのヘルシンキ。
主人公のサチエは、小さな食堂を営みながら、自分の手で日々を整えていきます。
おにぎりをにぎる。
コーヒーを淹れる。
テーブルを拭く。
台所に立つ。
その一つひとつが、この物語では丁寧に描かれます。
何かを失ったあと、すぐに立ち直るのは難しいものです。
答えが見つからなくても、温かいものを食べて、眠って、朝を迎える。
まずはそこからでいい。
この小説は、そんな当たり前のことを思い出させてくれます。
心が折れた夜は、前向きな言葉が負担になることがあります。
『かもめ食堂』には、強い励ましはありません。
その代わり、生活を持ち直す感覚があります。
読み終えたあと、自分のためにお茶を淹れてみよう。
そんな小さな気持ちが戻ってくるかもしれません。
暮らしを続けることそのものが、回復の一部になるのだと教えてくれる一冊です。
文字を追うのもしんどい夜は、読む代わりに話す方法もあります。
▶オンラインで相談できる方法を見る
『ライオンのおやつ』小川糸|今日を生きる意味を思い出す物語
先のことを考えるだけで苦しい人に向く一冊です。
「生きることが怖い」
「この先を考えるのがつらい」
そんな気持ちを抱えている夜に、手に取ってほしい小説です。
33歳で余命を告げられた主人公・海野雫は、瀬戸内の島にあるホスピス「ライオンの家」で暮らすことを選びます。
穏やかな海。
レモンの花。
島の人たちの気配。
そして、毎週日曜日の「おやつの時間」。
その時間には、入居者がひとつだけリクエストできる、思い出のおやつが出されます。
雫は、なかなかそれを決められません。
過去の記憶や、残された思いを、まだ自分の中で整理できずにいるからです。
この小説は「死」を扱いながら、暗さだけで終わりません。
悲しみはある。
けれど、読むほどに、今日という日が少し違って見えてきます。
大きな希望ではなくてもいい。
明日までの時間を、もう少し大切にしてみよう。
そんな気持ちが残ります。
傷ついた心は、ときに先のことばかり考えて苦しくなります。
この物語は、その視線をいったん「今日」に戻してくれます。
まだ失われていないものに、目を向けるための一冊です。
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ|やり直しはできると思える物語
過去の失敗や家庭の傷を引きずっている人に向く一冊です。
「もう取り返しがつかない」
「やり直すには遅すぎる」
そんなふうに感じているときに、読んでみてほしいのです。
主人公・森宮優子のこの一文から、物語は始まります。
父親が3人、母親が2人。
家族の形が何度も変わりながら育った優子は、それでも日々をまっすぐに生きています。
複雑な家庭環境。
繰り返される別れ。
事情だけ見れば、重たい背景です。
けれどこの小説が描くのは、不幸の競争ではありません。
不器用な人たちが、それでも誰かを大切にしようとしてきた時間です。
登場人物たちは完璧ではありません。
失敗もするし、うまく渡せない思いもあります。
それでも、誰かの幸せを願って、次へつないでいこうとします。
この物語を読むと、過去は消えなくても、意味は変わりうるのだと思えてきます。
これまでの傷が、ただの傷で終わるとは限らない。
別の形で、いまの自分を支えるものになることもある。
そう感じさせてくれる一冊です。
本だけで抱えきれないときは
本を読む気力さえ湧かないとき、それは休んだほうがいいという合図かもしれません。
頑張って読もうとしても、文字が頭に入ってこない。
悩みが頭の中を回り続けて、活字の入る余白が残っていない。
そんな夜もあります。
そういうときは、いったんページを閉じましょう。
インプットではなく、胸の中のもやもやを少しだけ言葉にして吐き出してみてください。
それだけで、気持ちが軽くなることがあります。
・友だちには話しにくい
・家族にも心配をかけたくない
そんなとき、「まず聞いてくれる相手」がいることは、大きな助けになります。
Kimochiは、スマートフォンから利用できるオンラインカウンセリングサービスです。
自宅にいながら、自分のペースで、公認心理師に相談できます。
「外に出る力はないけれど、今夜は少し話したい」
そんな人には、こうした方法も選択肢になります。
無理に立ち直ろうとする前に、専門家の力を借りてみる。
それも、自分を守るための方法のひとつです。
本も読めないほどつらい方へ
スマホで相談できるサービスはこちら。
▶本ではなく専門家に頼るという選択
まとめ|心が折れた夜は、まず1冊だけでいい
心が折れたとき、すぐに元気になろうとする必要はありません。
・『西の魔女が死んだ』は、逃げてもいいと思わせてくれます
・『かもめ食堂』は、暮らしを立て直す感覚を思い出させてくれます。
・『ライオンのおやつ』は、今日を生きる意味をもう一度見せてくれます
・『そして、バトンは渡された』は、やり直しはできると教えてくれます
今の自分にいちばん近い1冊だけ、開いてみてください。
それでも本が読めない夜は、他の方法で心を休めましょう。
ゆったりとお風呂に浸かる
ストレッチをしてみる
など、なんでも。
そして、誰かに話すこと、助けを借りることも、同じように大切です。
つらい夜を越えるための方法は、ひとつではありません。
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